2004-01-05 Back to HomePage
 
 おはようございます。自然風景写真館の鳥越です。
今朝、発送された自然風景写真館ブログにて、「季節の便り」
が書かれていませんでしたが、上州の武尊山からの下山が遅れて、
サーバーへのアップが間に合いませんでした。
どうもご心配をおかけいたしました。

 ではあらためて、「季節の便り」をお届けいたします。


§4.季節の便り
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 正月も過ぎると、いよいよ冬も本番になってきたという感があります。
冬の太平洋側は天気がとても良くなるので、暖かい伊豆や千葉の海に取材に
出たくもなりますが、しかしこのところ、雪のある風景に惹かれて、
自然と北へ北へと足が向かうようになっています。

 正月は元旦を家で過ごした後、さっそく群馬県北部にある谷川岳方面に
取材に出かけました。

http://www.mapfan.com/index.cgi?MAP=E138.57.19.49N36.50.15.63&ZM=5
 冬の天気の良い日に関越道を通ると、遙か遠方に真っ白な雪をかぶった 山々が見え、「ああ、雪国に来たんだ」という感慨が湧いてきます。 正面の谷川岳を筆頭に、左に榛名山(はるなさん)、右に赤城山や 武尊山(ほたかさん)など、上州の名山が取り囲むように居並んでいるのを 見ると、「山の神様に見守られている土地だ」という気持ちになります。  やがて高速道路のインターチェンジを降り、温泉で有名な水上町に入ります。 ここまで来ると、谷川岳はもうすぐそこです。線路や民家の軒先の向こうには 白い雪をかぶった谷川連峰の姿が見えます。
 ただし、今年は例年に比べて、雪が少ないようです。いつもなら、1月に 水上を訪れると、もう一面真っ白の銀世界なのですが、少しがっかりしました。  水上駅の周辺で食事のできるお店を探していると、線路わきに人だかりが できていました。なんだろうと思って車を停めて近くに行くと、蒸気機関車が 停車していました。私は鉄道には詳しくないのですが、きっと希少価値のある 車両なのでしょう。とても高くて立派なカメラやレンズを手にした鉄道マニアや アマチュアカメラマンの人たちが、盛んにシャッターを切っていました。
 この黒々とした機関車が黒い煙をもうもうと吐きながら、真っ白な雪に 覆われた山々や谷間の中を力強く走る。今では失われてしまったけれども そんな風景が頭の中に浮かびました。まるで小説『雪国』の一コマのようです。  さて、水上から更に奥に入り、湯桧曽(ゆびそ)を経て、 上越線・土合駅(どあいえき)の上にある谷川岳ロープウェイ駅まで やってきました。除雪がされて車が入れるのはここまでです。 ここから先の林道は冬は雪に閉ざされて車では入れません。  車を道ばたに停め、スキーに履き替えて、雪の林道に入ります。 夏には車で楽に通れた林道も冬には一面の雪に覆われていました。
 一面の雪とは言っても、風の強いところ弱いところ、日の当たるところ 日陰のところ、様々な条件によって雪の表情は変化します。 柔らかい雪、凍った雪、あるいは風の力によって、一カ所が突然 盛り上がった面白い形になることもあります。
一般に「シュカブラ」と呼ばれていますが、風によって作られる 雪の造形美です。  林道の周りはブナの大樹がたくさんいて、夏に通った時には その鬱蒼とした迫力に圧倒されたものですが、冬の今は葉をすっかり 落とし、次の春までの深い眠りについているようです。
 しかし寒くて凍りそうなこの場所でも、死に絶えてしまったわけでは ないことは、この枝振りの力強さでも分かります。 冬は木々が葉を落とすことで、その幹や枝のシルエットがより力強く 感じられる季節でもあります。  さて、夏は車で10分の所を、一時間ちかくかけて歩き、 一ノ倉沢出合という場所までやってきました。 この場所からは、谷川岳から一ノ倉岳にかけての大岩壁を見渡すことが できるので、春・夏・秋には大勢の観光客で賑わう場所です。  しかしこの時期は、もちろん人っ子一人いません。樹間を抜ける ひゅうひゅうと言う、かすかな風の音以外には全く音のない、しんとした 静寂の世界です。背後には谷川連峰の東端に位置する山々が見えます。 左が笠ヶ岳(かさがたけ)、右が白毛門(しらがもん)という名前の山です。
 正面には谷川岳の大岩壁がそそりたっています。多くのクライマーが 挑戦を続ける日本有数の岩場の殿堂です。 冬のこの時期は雪に覆われて、容易に人を寄せ付けませんが、 それでもこの岩壁の冬季登攀にチャレンジする人がいるというのですから 人間の飽くなき挑戦心というものにはいつも感心します。
 時間は夕暮れ時で、あたりには徐々に夕闇のとばりが降りてきました。 それにしてもここは静かすぎて、不思議な感覚になってきます。 夏に来たときには、見上げていると首が痛くなるほど高くそそり立っている 大岩壁に圧倒されたものでしたが、不思議に今この時にはそれほどの 感慨が湧いてきませんでした。  夏にはまわりには大勢の観光客がいて賑わい、岩場には数名のクライマーが 取り付いて、ロープ操作を仲間に指示する大声がここまで聞こえてきました。 それら全てが躍動的に感じたものですが、今のこの時期は、空気までが 凍り付いたような静的な時間と空間でした。  世界屈指の大岩壁も、現実感の無い、はめ込まれた絵のように感じ、 まるで閉館まぎわの美術館で一人孤独に絵を眺めているような そんな感覚を持ちました。  やがて空には月が輝き始め、私はヘッドランプの灯りを頼りに、 また凍った林道を引き返して、愛車が待つロープウェイの駅まで 歩き始めました。  自然の風景には、ときめくような感動もあれば、このように 少しもの悲しくなるような印象を受けることもあるようです。 森や動物と同じように、やがて春を迎えるまで、 あの岩壁もまた眠るのでしょうか.  2004.01.05 鳥越章夫 ※上記の写真は、コニカミノルタのデジカメ DiMAGE-Xt を使用しています。 → http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0303/minolta1.htm
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